最小侵襲の手術とは何でしょうか。
切らずに手術する? そんなことは誰にも
出来ませんが、どうせ手術を受けるなら
傷は小さいほうがいいですよね。
もちろん傷だけじゃなくて、中の筋肉や骨も
切らなくて済むところは切って欲しくないと
思うのが当然だと思います。
最近流行の最小侵襲「人工関節置換術」
とは、できるだけ皮膚を切らず、また筋肉も
温存しながら行う手術のことです。そのため
術後のリハビリが早く進み、早期社会復帰が
容易になると言われています。ただしこの
手技を行うにはある程度の訓練が必要であり、
また海外研修に行かなければ
その手技のための特殊な器械を使えないと
いう制限があります。私は今年の9月に
オーストラリアのメルボルンで行われた
この研修Zimmer MIS TKASeminar」に参加して
きました。このような貴重な経験をすることで、福井県立病院で行なっていた
手術を改めて振り返ることができ、理解が
より深くなったと思っています。
さて、題名に挙げました「最小侵襲」に
ついてですが、こうして研修に行ってみると、
そこまでこだわる手技ではないと思いました。
確かに 皮膚の切開は小さいほうがいい、
中の筋肉などもあまり切らないほうがいい、
というのは事実だと思います。ただ、それに
こだわることで手術の難易度が上がり、
手術時間が無駄に伸びるようなことがあれば、
それが感染や血栓の合併症の危険性を高める
ことにも繋がりかねません。これでは意味が
無いのです。
「最小侵襲」手術。英語ではMIS(Minimum
Invasive Surgery)と言いますが、最近は
こちらの方が推奨されていることもあるよう
です。LIS(Less Invasive Surgery)。つまり
「より低侵襲な手術」です。傷の長さや
部分的な筋肉の損傷にこだわらず、その
患者さんの状態に合わせてより侵襲の少ない
方法、つまり適切な手術方法を選択し、
可能な限り合併症を避ける。これが今回の
研修で学んだことであり、今後の世界標準に
なってくる考え方ではないかと考えています。
当院では可能な限り低侵襲な手術を目指し
ますが、最終的には手術を受ける皆さんの
膝の状態や全身状態を総合的に判断して
手術手技を決定します。場合によっては
希望に添えないこともあるかと思いますが、
合併症を極力避けることが重要であると
考えているためであり、ご理解頂ければ
幸いです。
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