医師が話す整形外科の病気

 

医師 山内四朗
 

   

 皆さんは運動していますか? 「毎日仕事が忙しくて」とか、「運動が嫌い」とか。
「何かと理由があって運動はしていない」という方が多いと思います。そもそも何で
運動しないといけないの?という疑問もおありかと思います。

 まず、人間は老化する生き物だということを思い出してください。いつまでも
20歳ではありません。そんな昔のこと…と思われるのであれば、10年前でもいいです。
10年前にできていたことが、果たして今できるのか、10年後はできるのか、
よく考えてみてください。ちなみに私は、20歳の頃と比べれば部活でしていた剣道は
もう全くできません。また、これは余談ですが、朝まで飲んでも平気だったお酒も、
今では嗜む程度にしておかないと次の日がかなり辛いです。

 老化は人間の様々なところに少しずつ現れますが、今回は筋力についてのお話です。

 筋力というのは歳を重ねるとともに落ちていきます。それにより歩きづらい、
階段がつらい、立ち上がりがつらい、など日常生活を送る際に「ちょっとやりづらい」
という症状が出てきます。このような状態を放置すると、腰回りの筋肉が落ちてしまい、
猫背になり、歩く時も背を伸ばせない、さらには転倒・骨折という状況になります。

 私が仕事をしていて気になることは、皆さんの姿勢です。皆さんが座っている時や
立っている時、猫背だなと思うことは多いです。いわゆる猫背は、医学用語で
円背(えんぱい)といいます。座ると腰がまるくなる、骨盤が後ろに倒れている
(後傾と言います)状態です。この状態で立ち上がると腰が伸びないので、
前屈みになってしまいます。なので膝を曲げてバランスを取って、杖を体の前の方で
突いて支えることになります。
この状態では視線が地面に向いてしまい、またちょっとバランスを崩すと転倒して
しまいます。前に転倒すれば手首を、横に転倒すれば股関節を、後ろに転倒すれば
背骨を骨折して、入院・手術が必要となります。

 あまりに気になった方には背を伸ばすようにお話しています。座った状態でなら、
おへそを前に出すように、骨盤をしっかり起こす(前傾と言います)。立っている
状態なら、胸を張って、お尻を突き出して腰を反る、という感じです。壁に背を
付けて立ってもらうこともあります。もっと簡単に言うと、座高・身長を少しでも
高くする、と考えてもらってもいいです。腰が曲がっていると背が低くなって
しまいますから。

 この段階で、一時的にでも腰を伸ばすことが出来たあなた! そんなあなたには
十分見込みがあります。と言うのは、出来たということは、背骨が固まっていない
からです。それでも腰が曲がってしまうのは、単にクセなのか、腰回りの筋力が
足りないからです。クセであれば注意するだけですし、筋力が足りなければ
鍛えるだけです。当院ではこれを「体幹トレーニング」と称して様々な指導・
リハビリを行っています。「リコア」と呼ばれる体幹筋トレーニングの器械も
ありますし、ドローインという体幹筋を鍛える方法もあります。これらの運動を
自宅でもしっかり行えば、およそ3ヶ月で効果を実感でき、昔のように腰を
しっかり伸ばすことができ、また腰回りが安定することで日常生活も楽になります。
慢性腰痛が治ることもあります。
そして残念ながら一時的にでも腰を伸ばすことができなかったあなた。それは
背骨が固まってしまっているからかもしれません。その場合は無理に伸ばそうと
すると怪我をしてしまう可能性があるので、今以上に猫背にしないという方針で、
できる範囲で腰を伸ばす、体幹筋を鍛えるといいと思います。
猫背にならない薬や注射はないの?と聞かれることが多いです。答えは残念ながら
「ありません」。痛みを無くすだけの薬はもちろんあります。注射もあります。
しかし今現在、皆さんが相対している猫背は、結局老化現象です。老化に
立ち向かうには、自分で筋肉を鍛えていくしかありません。それも毎日です。
週1回ではダメです。2回でも3回でもダメです。毎日です。毎日ちょっとだけでも
いいので、自分のために運動して、体幹筋を鍛え、猫背を直し、日常生活を
不安なく過ごせるようになって頂ければ嬉しいです。そのためには、当院の
全スタッフがしっかりサポートしますので、お気軽に相談してください。

 自分のための運動はいつからしますか? 答えはもちろん「今日から」ですよね!


   

 
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