院長が話す整形外科の病気

 

  院長 山内健輔
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 発疹・腹痛・食欲不振・胸やけ・口内炎・血圧上昇・動悸・眠気・頭痛・発熱・貧血・血尿・ショック・皮膚粘膜眼症候群・肝機能障害・腎障害・うっ血性心不全・間質性肺炎・横紋筋融解症・無菌性髄膜炎・喘息…
これらはドラッグストアで誰でも購入できる薬の副作用です。本当はまだまだあるのですが、紙面の関係上、全てを載せることはできません。それでは、これを見て皆さんはこの薬を購入する気になりますか? そもそもこんな薬が売られていていいんでしょうか? 今回はこのような話をしたいと思います。


 まずこの話をしようと思ったきっかけですが、それは皆さんから薬について様々な意見を聞いたことから始まりました。そんな中でちょっと気になったのは「痛いけど薬は飲みたくない。副作用が心配だから」という意見があり、これは半分合っていて半分間違っています。そこで薬を服用するということに対して正確な情報が必要ではないかと思いました。



 さて、「半分合っている」というのは、何でもかんでも薬を飲めばいいというものではない、ということです。例えば最近の研究では、3ヶ月を過ぎた腰痛の原因は腰ではなく頭である、と報告されています。つまり慢性の腰痛を感じている人は、その痛みを頭が記憶していて痛みを感じている、ということです。もちろん腰に全く痛みがないとは思いませんが、外来をしていてそう感じることは多々あります。なのでそのような方には薬をどんどん処方していくのではなく、痛みに固執し過ぎず、趣味など他のことに気が向くように促したり、また痛みと上手く付き合っていくことを考えてもらったりすることもあります。これは認知行動療法という治療法に準じたものです。



 他にも、自分で痛みを作っている方も多いと感じています。「痛み止めを飲んだのに効かない」と言われる方の話をよく聞くと、痛いのに仕事が忙しかったり、家事に追われていたり。痛い部位を手で毎日ぐりぐり揉んで「治らない」と言われる方もいます。ここで問題なのは、痛みが出るだけのことをしているにも関わらず、皆さんにその自覚がないことです。よくある話として、主婦の方に「何か忙しいことしてますか?」と聞くと、多くの方が「何もしてません」と答えます。でも実際には掃除して洗濯してご飯作って・・・結構忙しくされています。それが毎日のことなので、何もしてない、と思ってしまっているのでしょうが、家事は立派な重労働です。月給20万円くらい取ってもいいくらいです。整形外科における治療の基本は安静です。しかし慌ただしい現代社会、なかなか安静ができません。そこで薬の出番となるわけです。薬はあくまで治療の2番目であり、安静が最優先なのです。そして痛みが落ち着いてからは、適度な運動をするといいでしょう。



 それでは「半分間違っている」とはどういうことでしょうか。現代医療において、薬はなくてはならないものです。癌や心筋梗塞、胃潰瘍、インフルエンザ、細菌感染などなど、薬を使うことで人間は多くの病気を克服してきました。新薬の開発には何十億円もの研究費がかけられ、完成してからも臨床試験を何段階も経てようやく世に出ます。その後も市販後調査といって、実際に処方されてからの効果や副作用のチェックが行われます。ここまで徹底して調査された薬を服用しない手はないです。え?でもやっぱり副作用が怖い?そうですよね。一番最初に書いたように、薬には多くの副作用があります。しかしこれは徹底的に調べられているからこそ、極めて稀な副作用まで明らかになっているのです。そして副作用がないなんて薬は存在しません。でも大丈夫です。副作用はそんなに簡単には出ません。宝くじよりは高い確率ですが、二人に一人、50%もの確率で副作用が出るなんてことはあり得ません。多くは百人から千人に一人程度で、その症状も胃痛や便秘など軽い症状が多くを占めています。上に挙げたような怖い副作用が出ることはほとんどないのです。




 痛い時や困った症状があるときには、薬を安心して「利用」してください。その症状によく効く薬はきっとあります。薬によっては少しずつ増量していかないといけない薬もありますので、効果がなかなか感じられにくいこともあります。その時でも自己判断で中止せず、必ず相談してください。皆さんが安心して治療に専念できるように、スタッフ一同全力で応援します。



                          






 
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