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  医師 山内四朗
 


新しい関節リウマチの薬について  

   


 体のあちこちが痛いと神経痛かリウマチかと思われる患者さんが多いのですが、
神経痛とリウマチは全く別の病気で、その原因も異なります。



 リウマチは免疫異常を背景にして全身の関節
が腫れて痛む関節症状の他に、全身症状として
微熱、朝のこわばり、全身の倦怠感、体重の
減少、リンパ線腫などを伴います。(表1)。
そしてリウマチは進行性で、多くの例で関節が
破壊され、変形していきます。リウマチの発症や
症状の進行に関するメカニズムについてはまだ
完全に解明されていませんが、毎年のように
新しい知見が加えられており、将来的にはその
病態が明らかになるでしょう。

関節以外の症状
表1


 関節リウマチは比較的若年者の女性に多く発症し(40歳代が最多)、発症後およそ
2年間で関節の破壊が急速に進むことが明らかなので、リウマチの進行を抑え、症状を
軽減させるためには、早期に発見し、早期に治療することがに重要です。



早期リウマチの診断基準

 
表2    


 リウマチは進行するので、その進行度を示す
病期が初期から中等期、高度、末期の4つに
分類されています(表3)。高度、末期になると、
関節が破壊され変形して日常生活上、不自由
度さが増していきます。

関節リウマチの病期
表3


   この数年でリウマチの治療は目覚ましく
進歩し、これまでの「痛みを和らげる、
症状を軽くする」目的の治療から、将来
起こり得る関節の破壊を防止し、痛みの
ない状態(寛解《かんかい》)へ治療目的を
高める方向に向かっています。従来使用
してきた薬では充分な治療効果を得られ
ることが少なかったのですが、リウマチの
病態である自己免疫機能を抑制する
目的で、免疫抑制剤が抗リウマチ薬
として使用承認され、治療効果が向上
してきています。リウマチ治療薬は
いろいろありますが、その中でメトト
レキセート(MTX)が最も多く使用されて
います(表4)。
表4


 抗リウマチ薬の特徴として、薬効に個人差があること、効果が出るまでに時間がかかる
こと、効果があっても治療を続けている間に、再びリウマチの活動性が高まってくること
(エスケープ現象)、副作用の発現率が高いことが認められています。



 特にメトトレキセート(MTX)は使用されることが多く、1週間に16㎎までの増量が承認
されたこともあって、日本リウマチ学会は診療ガイドラインを作成し、適正な使用を推奨
しています。合併症を防止するために、使用前の血液検査、胸部レントゲン写真などの
スクリーニング検査、内服中の治療は血液検査などでのチェックが必要です。



 2003年7月、我が国で初めて、生物
学的製剤がリウマチの治療に承認され、
その後、3製品が承認、使用されて
います。生物学的製剤は、リウマチの
病態に深く関わっている細胞間の情報
伝達物質(サイトカイン)などを選択的に
抑制して、リウマチの痛みや腫れを取り
除く強力な作用があり、遺伝子工学的に
開発されたので、4種類のこれらの製剤
を生物学的製剤と呼んでいます。これら
の商品名は、レミケード、アクテムラ
(いずれも点滴静脈注射)、エンブレル、
ヒュミラ(いずれも皮下注射)といいます
(表5)。 それぞれ種類は異なりますが、
薬剤間の有効性の差異は殆どなく、
どれもリウマチに対する抗炎症作用は
絶大です。どの薬剤を使用するかは
患者さんの状態、リウマチの程度に
よって考慮されます。
 

表5
 


 抗リウマチ薬とこれらの生物学的製剤の併用によってリウマチの治療は格段に進歩
していますが、更にリウマチが病気の状態でなくなる「寛解(かんかい)」にいたることを
治療目的として世界中で研究が進められています。将来的には不治の病といわれた
リウマチが完治することも夢ではなくなるでしょう。当院でも何人かの患者さんに使用
していますがその効果に満足されておられます。



 しかし良いことばかりではなく、生物学的製剤は健康保険は使えるものの、新薬である
ため高価で患者さんの経済的負担が大きくなっています。またMTXと同じく合併症も多い
ので、2010年に日本リウマチ学会は、使用上のガイドラインを出して注意を喚起しています。



 今後もさらに新薬がどんどん開発されていくと思いますが、私としては、患者さんの
利益を考えたときにもっと安く、そしてもっと副作用の少ない薬の出現を期待しています。


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