医師が話す整形外科の病気

 
 
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  医師 山内四朗
 
骨粗鬆症について  

   


 骨粗鬆症とは、「骨強度が低下して、骨折しやすくなる疾患」 と定義づけられています。 骨強度とは
骨密度と骨質が 合算したものであり、骨強度を
規定する要因として骨密度が 7割、骨質が 3割を
占めます。骨質とは骨の構造、骨代謝回転、 微細損傷の集積、骨組織のミネラル化といったもので
個人の骨の性質といっていいでしょう ( 図1 )。
 

( 図1 )



   ( 図2 ) 骨粗鬆症の有病率
   日本での 骨粗鬆症有病率は
年齢と共に増加し、女性は男性の
3倍で、特に 60歳代後半から
有病率が高くなり、80歳代では
女性の半数、男性の 2~3割が
骨粗鬆症に罹患していると推定
されています ( 図2 )。
   



 
 またそれに伴って骨折の頻度も増加し、2002年に行われた調査によれば、大腿骨
頸部骨折 ( 足のつけ根の骨折 ) の推定
発生数は 11万 7900人であり、5年前に
比べて 2万5500人増加しています。
年代的には 60歳以降急激に骨折が増加
しています ( 図3 )。
 
( 図3 ) 大腿骨頚部骨折の年代別発生率とその推移


 骨粗鬆症は骨吸収と骨形成のアンバランスによって生じます。 つまり、骨吸収の亢進によって失われた
骨量を骨形成によって充分カバーできなくなったときに骨密度が減少します。


 骨吸収が亢進する原因として、①女性ホルモンの低下、②カルシウム ・ ビタミンD欠乏、③その結果と
して 副甲状腺ホルモンの作用亢進などが考えられています。 更年期になると、女性ホルモンの分泌が
低下しますので、更年期以降の女性に骨粗鬆症が増加してくるのはこのためです。


( 図4 )
   老年期の骨密度は子供時代から思春期にかけて獲得される最大骨量 ( Peak Bone Mass )と成人期以降における骨量の喪失量で決まります。 従って、思春期までにいかに多くの骨量を獲得しておくか、そして成人期以降は いかに骨量の減少を 少なく留めて
おく事が出来るかで 老人期の骨量が決まります ( 図4 )。


 骨粗鬆症が原因で骨折が生じると、それに伴って機能障害や、慢性の痛みが生じたり、日常の生活動作が困難になったりします。特に、大腿骨頸部と背骨の椎体の圧迫骨折はその傾向が強く、生命の予後にも 悪い影響を及ぼします。 椎体の骨折は
骨粗鬆症骨折の中で最も起こりやすく、70歳代前半に 4人に1人が骨折しているという報告があります。
(沢山の背骨が骨折すると背中が丸くなり、脊柱の後弯が強くなり、慢性的に背中や腰の痛みが持続
します 図5 )。
 
( 図5 )


 骨粗鬆症の診断には レントゲン検査と骨密度の測定が必要です。 骨量が減少して、軽い怪我でも骨折を生じた人(脆弱性骨折)、それ以外の人で骨密度測定で若年成人の平均値の 70%未満の人は骨粗鬆症と診断されます。


 骨粗鬆症となって、骨強度が低下し、骨折の危険が増加しても 直ぐに症状が出るわけではありません。
合併症である 骨折を生じて、体の機能が低下することが 問題であり、そのため 骨折を予防することが
骨粗鬆症治療の目的となっています。 そのためのガイドラインが考えられています。
  
 1. 男女共 50歳以上で、以前に脆弱性骨折がある人。
 2. 骨折はないが、骨密度が若年成人の平均値の 70%未満の人。
 3. 骨密度が 70~80%未満の閉経後女性あるいは 50歳以上の男性で、なおかつ、喫煙、
    飲酒、大腿骨頚部骨折の家族歴のどれかを有する人。

 これらの人には薬物による治療を開始することが望ましいと言われています。 薬物治療として最近は
ビスホスホネート製剤が多く使用されています。 骨密度を増やす効果とともに、椎体の骨折を防止する
ことが判明しています。


 その他、食事療法として、カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、たんぱく質などの摂取も骨粗鬆症の治療に
必要です。 また運動や日常生活活動を活発にすることも骨折予防に効果があります。


 骨粗鬆症は 一人ひとりの患者さんで その病態が異なるので、最適な治療を選択するには、主治医の
ドクターに相談されるのが良いでしょう。 早めの診断と早めの治療が骨折予防になりますので、少なくとも 50歳になったら骨密度の測定をお勧めします。  

 

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