医師が話す整形外科の病気

 
 
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  医師 山内四朗
 

変形性膝関節症について





 変形性膝関節症《 へんけいせいしつかんせつしょう 》 とは 関節軟骨《かんせつなんこつ》 の老化と使い
すぎによって 骨、軟骨が磨耗し、痛みが出る病気です。体重の増加、 膝の内反変形《 ないはんへんけい 》
( O脚 )、下肢の筋力の低下などが誘因となります。最近のデータによると、日本では 変形性膝関節症の
患者さんは 男性で 1240万人、女性 1840万人いると推計されています。男女あわせて約3000万人
ですから中高年者が罹患する最も多い病気の 一つといえます。

  ところで関節は どんなもので構成されているのでしょうか。 関節を 構成するものの 一つは 関節軟骨で
あり、 もうひとつは関節包 《 かんせつほう 》 (滑膜 《 かつまく 》 )です。 軟骨は軟骨細胞を中心にして、
Ⅱ型コラーゲン、アグリカン、ヒアルロン酸などから構成されています。( 図1 )。 また アグリカンは紐状の
コアプロテインにコンドロイチン硫酸鎖、ケラタン硫酸鎖が結合したもので、更にヒアルロン酸と結びついて
います( 図2 )。 このような 構造のため、 関節軟骨は 水分を多く含み、 衝撃を 吸収する 作用を持って
います。


(図1)
 

(図2)

 また関節包は その内側に滑膜という組織があって 関節の潤滑や軟骨細胞への栄養補給に必要な
関節液を産生しています。 滑膜には 3種類の細胞が存在し、そのなかの B細胞は 関節液の主要成分
である ヒアルロン酸を産生しています。

 変形性膝関節症の原因は明らかではありませんが、先ほど述べたように、体重増加、膝の内反変形、
筋肉の老化による筋力の低下などによって、膝の軟骨に加わる 機械的負荷が増大する一方、老化した
関節軟骨はこのような負荷《 ふか 》の増大に対応できず、コラーゲンや プロテオグリカンなどの 軟骨
基質の産生が減少し、むしろ基質を破壊するような 酵素の産生が高まって、その結果、関節軟骨の
強度が急速に低下、関節の変形が進むと考えられています。

 変形性膝関節症の主な症状は 膝の痛み、腫れ、変形などです (表1 )。 変形は多くが内反変形と
なります ( 図3 )。

(表1
 

(図3)

 診断は 臨床症状と 膝のX線撮影で 90%可能ですが、 他の病気との鑑別診断をするための血液検査、時に MRI検査を行うこともあります ( 表2 )。 一般に、変形性関節症は 経年的に悪化する傾向があり、
長い時間を経過すると痛みも増強するのが普通です ( 図4 )。

(表2)
 

(図3)

 治療法はいろいろありますが、 出来るだけ身体
に無理のかからない方法を選んで行います。 もし
肥満があれば栄養指導を受け、減量する必要が
あります。 痛みが 強いときには 杖などで免荷
《めんか 》 (体重をかけない)し、 膝に重みが
かからないようにしたり、 正座、長歩きなどを
避けるようにします。また、膝用のサポーターを
装着することも 痛みの軽減に役に立ちます。
膝の内反変形を矯正するために 足の裏に取り
付ける足底板 《 そくていばん 》 の使用も効果的
です( 図5 )。
 

(図5)


(図6)

 
 

 膝の安定性を高めるために、大腿 《 だいたい 》
前面にある大腿四頭筋 《 だいたいしとうきん 》 の
強化訓練を行ったり、 膝を暖めると痛みが和らぎ
ますので、 理学療法として マイクロ派などの温熱療法を行います。
 
  大腿四頭筋の 訓練法は 種々ありますが 実際
には医療機関で指導を受けるとよいでしょう( 図6 )

  これらの理学療法でもあまり効果のないときには薬剤を 使用します。 非ステロイド剤 などの 痛み
止め、 ヒアルロン酸の関節内注射、シップ剤などが主に使用されています。



 今までの保存的な治療法でも痛みがとれず
生活に支障があれば 外科的な治療が必要に
なります。 関節内を綺麗に洗う 洗浄法、 下腿
の骨を骨切りして 膝の内反変形を矯正する
方法などがあります。 その他、 膝の軟骨を
切除し、 金属と プラスチックに 置き換える
人口関節置換術を行うこともあります( 図7 )。
どの方法がよいかは それぞれ人によって
異なります。

 

(図7)

 どんな人でも年を取れば 体のあちこちで加齢的変化が生じます。 また 若いときから仕事で無理使いを
したり、 過激な運動をすると変形が生じ、 その変形も高度になります。 中高年の人で膝に痛みが出たら
ある程度はやむを得ませんが、 膝を労わることで変形性関節症の進行が防げます。 長時間の歩行や
正座など 膝に負担をかけないよう、 また 肥満傾向の人は減量することが重要であることを 強調したいと
思います。


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