医師が話す整形外科の病気

 

 
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  医師 山内四朗
 
 
救急処置


今回は救急処置、応急手当について述べたいと思います。
 生命の存続に係わるような緊急、且つ救急の事態としては心臓 ・ 脳の血管系の発作(脳卒中、心筋梗塞など)があり、また交通事故 ・ 労災事故なども救急の場合があります。このようなアクシデントに見舞われた人に遭遇したとき、どう対処したらよいのでしょうか。まず第一に、意識があるかどうか、呼吸が正常であるかどうかを確認する事から始まります。意識も呼吸も正常であれば、さしあたりの応急手当は不要で、ひとまず安心といえます。では、意識のない人を見たらどうしたら良いのか?ということですが、ここからは救急蘇生法の手順となります。なお、意識があるかどうかをみるには名前を呼んだり、叩いたりして反応があるかどうかをみれば判ります。
 そこで意識のない人を見たら、先ず

:Air way「気道」を確保し、呼吸をしているかどうか調べる

 気道を確保する方法は色々ありますが図1のような方法で良いでしょう。呼吸の有無は胸・腹の動きをみたり、口、鼻に耳を近づけることによって確認できます。呼吸をしていることが確認できれば、気道を確保した状態で直ちに医療機関へ搬送します。
 
    図1 頭部後屈と項部挙上
による気道確保


:Breathing「口対口人工呼吸法」
 呼吸がない場合には人工呼吸が必要です。図2のような方法で行ってください。鼻をつまみ、相手の口を覆い、大きく息を吹き込みます。この場合、気道を確保しておくことが必要です。大きく、早く、4回行います。
その後、脈があるかどうか、首の頚動脈、手首の橈骨動脈をさわって調べます。

 

       図2 首を持ち上げて頭を下げ、
口を大きく開いて患者の口を覆い、
上腹部を横目で見ながら息を吹き込む。


:Circulation「心マッサージ」
 脈が触れないときは心、肺機能が低下、もしくは停止していることを意味 していますので、 直ちに 心マッサージを 開始しなければ なりません。救助者が二人の場合、心マッサージと人工呼吸を分担し、五対一の比率で連続して行います。心マッサージは一秒間に一回の割合で(毎分六十回)胸の中央で、両方の乳を結んだ線上を背骨の方向に向かって三~五cm圧迫します。
 
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 なぜ、このA~Cの処置を迅速に行う必要があるかといいますと、心・肺の機能停止は一定の時間を超えると重篤な臓器障害を残します。特に脳は低酸素に弱く、三~五分で不可逆性変化に陥ると言われています。発作、 外傷などによって意識や、 呼吸がなくなった場合には、 低酸素 あるいは無酸素の状態になっているわけで、近くの人が直ちに蘇生法に着手する必要があります。 救急車を呼んで医療機関へ搬送してもその限界時間をオーバーしてしまい、救命できないことがありますので、日頃から救急蘇生法を訓練しておくことを強調したいと思います。
 次に家庭内での応急手当について述べたいと思います。

●皮膚の損傷
 擦り傷 ・ 切り傷 ・ 挫滅創など色々な場合がありますが、 創が汚染されている場合には、 消毒薬で傷口を洗い、ガーゼで覆います。出血がひどければ 「止血」 が必要ですが、紐、ゴムなどで縛って止血を行う場合には却ってうっ血させる場合もありますので注意します。

●気管内異物
 小児では食物片が迷入することが多いようです。逆さにして吐き出させるようにしましょう。三歳以下にみられるピーナツの迷入は放置しておくと危険ですので必ず医療機関に受診させてください。
 お年寄りが餅などをノドにつまらせることがありますが、 この場合には直に指を口の中に入れて取り出して ください。

●やけど
 発赤だけの一度から、皮膚の壊死を起こす重症の三度までに分類されますが、これは損傷を受けた時の温度と作用時間によってその程度が決まります。いずれの場合も30分程度の局所冷却を行うことが鎮痛、創部の浮腫、熱創の深達化防止に有効なので、流水や、氷水で冷やしたタオルで創面を直接冷却します。

●鼻出血
 大部分は鼻入口部での鼻中隔粘膜から出血することが多いのでここをガーゼなどで圧迫します。
風邪、蓄膿症、高血圧、血液疾患があると止血しにくいのでこれらの病気があるときには注意を要します。

●タバコ中毒
 乳幼児がタバコを誤食する事故はかなり多いものです。 1本の紙巻タバコに含まれるニコチン量は 10~
20㎎ で、乳幼児の致死量に相当しますが、幸い、ニコチンは胃酸中では溶けにくく、少量のニコチンによる嘔吐作用のために吐いてしまい、重症化することは少ないといわれています。 誤食後、2時間しても症状がなければ先ず心配いりません。


●蚊取線香・電気蚊取線香用マット
 乳幼児の誤食が多いのですが、その中毒量は蚊取線香で2~3巻、マットでは150枚以上といわれていますので普通の場合には全く心配無用です。

●ゴキブリ団子
 主成分はホウ酸であり、これは細胞毒性と中枢神経抑制作用を有します。経口致死量は乳児2g、幼児5g程度なので誤食した場合には危険です。すぐに吐き出させて医療機関を受診させる必要があります。

●日射病
 日陰で仰臥させ、下肢を高く挙上し、襟や、ベルトをゆるめて楽にさせて、意識があればスポーツ飲料などを飲ませます。身体の冷却は不要です。
 日射病では体温の上昇はみられないのが普通ですが、 病状が進展すると熱射病になり、 体温が上がり
ます。これは危険な状態ですので医療機関での治療が必要です。すぐ医療機関へ搬送しましょう。

●こむら返り
 運動時に発生することが多く、予防が大事です。運動開始前のウォーミング、終了時のクーリングを充分に行うことです。こむら返りがはじまれば膝を伸ばし、足関節を顔のほうに曲げます。またマッサージをゆっくり行います。

●スポーツ時の捻挫
 基本的に次の4つのことを行なって下さい。
① 捻挫した関節は動かさない。
② 20分以上、氷・冷水で冷やす。
③ 弾力包帯などで圧迫する。
④ 捻挫した関節を高挙しておく。
これらはいずれも患部の腫れと痛みを軽減させますが、あくまでも一時的な応急手当でしかありません。骨折の有無や、その他の検査が必要なこともありますので医療機関を受診してください。





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