あげさんへ・・・

　私、気がつきました。あげさん、あなたのこと、かなり
ないがしろにしていたってことに。もう一度、献立見直して
みました。確かにあげさんの使い方が、他の人より少ない。
思い起こせば私、小さいころから、あんまりあなたのこと
好きじゃなかった。ごめんなさいね。だから、無意識に献立に
入ってこない、浮かんでこない。家でも、主人はあげ大好き
人間です。ぽってりと甘くどく炊いたあなたを見ると、目の色
が変わります。

　でも、買い物の時、つい買い忘れてしまう。前を通っても
気がつかない。主人の美味しそうに食べる顔、見ていると
幸せなのに・・・。その顔が出てこない。あなたの前では私、
冷たい女になっています。あなたにいじめられた訳でも
ないのです。それなのに・・・。

　小さい頃、一番嫌いだった人参は、バンバン献立に入って
くるのに。（でも、食べるとなると、カレーライスの人参は、
今でもなぜか最後まで残っているのですが）

　これからは気をつけます。院長先生も、あなたのことが
好きだって、最近知りました。あなたはまさにおふくろの味。
その味が出せるように、あなたを忘れないために、お豆腐
売り場の前では、きっときっと立ち止まります。

　そして、あなたの視線、熱く感じます。

献立に「あげの炊いたの」が入るのを楽しみに待っていてね

 

Lovely　ルイ・ヴィトン様

　あなたを初めて手に入れたのは、短大の卒業旅行の時。
あなたはグアムでも大人気で、どのブランドよりも、
光輝いていました。沢山の人があなたに夢中で、店の中は
"女の戦場"になっていました。手に入れるのに、どれだけ
苦労したことか・・・。

　一式全部揃えて、ウキウキで日本に帰ってきたのに、
その一週間後、ひったくりに遭い、見知らぬ男に全て
奪われてしまいました。

　悔しくて一日中泣きじゃくり、警察で何十回も、あなたの
話をしたのを、今でも覚えています。

　そんな悲しい事件から立ち直り、私は次の旅行で、また
あなたをｇｅｔするために戦いました。街を歩いていると、
あなたの仲間を沢山見掛けますが、やっぱりあなたが一番
どんな洋服にも似合うところがとても魅力的　

　冬のボーナスで、またあなたに会えるのを楽しみに
しています。

 

氷様へ・・・

　真夜中のナースセンター。静まりかえる中、隣の準備室
から聞こえる音・・・。ガタガタン・・・ウィーン・・・
そう、この音は製氷機の中で、大好きな氷様ができた音。
まるで、「さぁ、おいで。おいしい氷ができてるよ～。」と
叫んでいるみたい・・・。でも、ダメダメ。ここにある氷様は
患者さんたちのもの。

　やっぱり私が一人占めできるのは、家の受け皿で
待っている私専用の氷様。私の乾いた喉を潤してくれる
大事なもの。あっさりしていて、歯ごたえのある、毎日
食べても飽きのこない氷様。
朝起きて、まず1個、コリコリと食べながらお弁当と朝食を
作り、出勤前にもう一個・・・。あとは、帰るまでおあずけ
状態。帰宅したら「ただいま」の後、すぐ1個。夕食の
準備を手伝いながらもう1個。もう止まらない。寝るまでに
何個食べることか・・・。

　時々、お腹の調子が悪くなる時もあるけど、
私のために毎日スタンバイよろしくね。氷様

ギプス殿

　とても不思議な仕組みのギプスさん。初めてあなたに
会ったのは、10年前の春でしたね。私はあなたの変貌
ぶりに、ただア然とするばかりでした・・・。最初、包帯の
ように柔らかな顔をしているくせに、ドボンとお湯に浸り、
手や足にグルグル巻きついたかと思ったら、容赦なくアッと
いう間に、カチンコチンに固まってしまうなんて。この時の
院長先生がすごい早技で、たま～に焦っている看護師に、
注意しているのを知っての行為ですか!?看護師は落ち
込んでしまうんですよ。

　それにしても、どうしてそんなに扱いにくいのですか?
あなたが手や足についていると、かゆい所もかけず、
お風呂にもゆっくり入れず、汗をかけばにおってくる・・・。
そして外す時は、恐怖の電気ノコギリもどきや、電気メス
もどきが登場し、みんなを震え上がらせていますよね。

　だけど、固まったあなたは、なかなか頑丈でス・テ・キ
あなたのお陰で、痛～い骨折なんかが、治療できちゃうん
ですもの。たのもしくて、ホレボレしちゃいます。

　これからも、あなたとは長いお付き合いになるでしょうが、
あんまり意地悪しないで下さいね。なくてはならない存在
なのですから・・・。

（追伸）私の手や足には巻きついてこないよう、
　　　　　よろしくお願いしますネ