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美空ひばりさん

 最近、美空ひばりさんの歌がしばしばテレビで放映されている。
もう亡くなってから何年になるだろうか。若いときはひばりさんの歌は
それほど好きではなかったが、最近になって良い歌も多く、上手だなと
感じている。もう15年以上も前から、手術の時にひばりさんの歌を
BGMとして取り入れてみた。するとどうだろう。心も落ち着き、
メスさばきのテンポも良く、手術もスムーズにいくことが判った。
手術場のBGMは患者さんの希望によってナースがセットするのだが、
例えば「ミスチル」の曲のように若者が好む歌だと何故か手術の
流れが悪くなる。あのリズムは私には合わないのだ。古い人間
だからかもしれない。その辺はナースも心得ていて、手術が佳境に
入ってくると、ひばりさんの歌に替えてくれる。その気配りに感謝。
それで手術もめでたし、めでたしとなる。今のところ、私の一番の
お気に入りは米山正夫氏の作詞、作曲「津軽のふるさと」である。




蜜柑

 5,6年前だったか、植木屋さんで蜜柑の鉢植えを買ってきた。
私の部屋は3階で南に面しており、夏になるとテラスに太陽の直射日光が
当って部屋の室温が上がるため、植木鉢を置いて何とかその日差しを
和らげようと思ったのである。春になると少しだけ花を咲かせるのだが
到底実をつけることはなかった。世話らしいことをしたわけでもなく、
せいぜい水をやるだけであったから当然ではあったのだが。一昨年、
となりに診療所を移転してその敷地内に少々の空き地ができたので、
2本の蜜柑の木を植木鉢から直に移植してみた。今度は少し頑張って
通販で買った「M酵素」を1週間に一回はキチンと撒布した。そして毎日
葉っぱの具合や、虫が付いていないか点検した。蜜柑の葉っぱは
美味しいらしく、結構虫がついて、一日に2~3回は診療の合間に
見に行って虫を取り除いた。その甲斐あってか、昨年は蜜柑の木は
いっぱいの花を付け、2本の木併せて12個の蜜柑が成熟した。
表面は青い蜜柑であったが予想以上に甘く、美味しく感じられた。
これで良しという気持ちもあって、又、生来の怠惰な性格から

今年の冬は何にも手当をしなかった。
厳しかった今年の冬の寒さにも負けたのだろうか。
木の芽時になっても殆どの葉っぱが半枯れに
なっていて、芽吹きする様子も見当たらない。
何物に対しても一時ではなく、永遠の愛を注ぐことが
必要なのだ。もう手遅れかもしれないが、これから
頑張って世話をしたら今年も白い花を咲かせ、
実を付けてくれるだろうか。
 



さくら

 今年は例年より早く桜が咲いた。天気の良い青空のもとで桜を見るのが
好きだ。これは私の少年時代の追憶と無関係ではないだろう。
小学校の6年間、中学校の校庭のすぐそばで暮らしていて,春は桜の
花の中で遊び、夏は幹の脂を吸いにくる油蝉を捕まえて遊んでいた。


 しかし、最近はそのような感傷とは違ってきている。
5年前の春、のどの手術をした。その時も病院の
庭に桜が咲いていて、病室から眺めていた。
暗い闇から生還したようだった。 毎年桜は咲く
けれどもそれは去年の同じ花ではなく、その花を
眺める私も去年の私ではない。一年の時が経って
しまったのだ。花も人も時を移ろっている。今の
私の年齢を考えたら、これからの年月で何回、
桜に巡り会えるのだろうかと思う。
 

 「年々歳々花相似たり,
         歳々年々人同じからず」 (劉廷芝)。

 3年前に正月に頂いた山形の啓翁桜を鑑賞して、花びらが散った後、
4本を挿し木にしてみた。1本だけが生き延びて,細い幹ながら1メートル
程に成長した。そして今年、いつもの開花時期より2ヵ月程遅れて、3月に
可憐な花びらをつけた。 家の敷地にソメイヨシノを植えようかと女房と
話しをしている。



上寿記念

 Wさんという患者さんがおられる。1昨年、100歳の上寿記念にお祝いを
ご自宅までお届けしたことがあった。Wさんは矍鑠としておられて、御自分の
すんでいる地方の歴史を研究され、その成果を書物にして上梓され、私も
1冊頂いた。多少腰痛はあるものの、100歳以上の方で元気で?通院
(1ヵ月に1回くらい)されている患者さんは他にはおられない。
その後、色紙をいただいた。 


 「人生は勤むるにあり、
          老いたる馬は道を忘れず」

 私も含めた今のお年寄りの多くは戦前、戦後の辛い世相の日本を
生きてきた人達である。私も女房も、子供達から休めと言われても
なかなか休む事が出来ないのはそういう時代を生きてきた習性なの
かもしれない。しかし老いたる馬であっても、駄馬であっても、今まで
歩んできた道を忘れずに前へ進んでいく事が生きている証しであり、
その人(私の)の人生ではないかと考えている。




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