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ふくい桜マラソンへの挑戦
~サブ5を目指して~

  リハビリ・ラベンダー

 4時間46分13秒、14秒、15秒…ゴールが見えた。もうゴールは目前だが、
一歩一歩が重く、ゴールが遠く感じる。「頑張れ、あと少し」と多くの声援が
不思議と脚を動かしてくれた。46秒、47秒、48秒、人生初フルマラソン完走。


 私が、フルマラソン参加を決めたのは大会7カ月前。ジムでトレーニングを
続けていた私は、何か目標をもってトレーニングに励みたいなと思っていた。
そのころ、福井で初となるフルマラソン開催についてテレビや広告等で度々
目にすることも多く、また、以前から人生で一度、フルマラソンへ挑戦して
みたいと思っていた事もあり、「ふくい桜マラソン2024」への参加が
私の目標となった。早速エントリーし、大会当日に向け練習を開始した。
しかし、フルマラソン完走に向けて何をどのように練習するのか全く知識が
なく、計画することさえままならなかった。まず、フルマラソン初心者は
「サブ5」=5時間以内での完走を目指す事が一つの目標であると知り、
私も「サブ5」を目標に完走を目指すことにした。私なりに色々と調べて、
大会当日までの計画を立てた。筋力トレーニングは、私の本業である
理学療法士としての知識も取り入れ、ジムでのトレーニングを継続した。
ランニングは時期に合わせて走る距離やスピード、時間など計画に合わせて
走り込んだ。

 迎えた大会当日。天気は曇りのち晴れ。トレーニングの成果もあり体調は
かなりいい状態。スタート地点には大勢のランナー。それぞれが思い思いの
準備をしている。スタートが近づくにつれランナーや沿道で応援している
方々の興奮が一気に高まる。そして、第1ウェーブのランナーがスタート。
続けて私達、第2ウェーブのランナーがスタートした。

 いよいよ始まった、私の挑戦。

 自分のペースをつかむために高ぶる気持を抑えながら走り出した。脚の
状態がいいからなのか、テンションが上がっているからなのかわからないが、
軽やかに走ることができた。そうなるとペースは自然に上がり、前へ前へと
脚を進めた。

 5㎞地点を通過。まだまだ余裕があり呼吸の乱れもない。普段車で走行
している道路を自分の脚で走るのは新鮮であり、見えてくる景色も違って
見えた。気分も良いままに10㎞地点へ。サブ5を目指すには1㎞を7分の
ペースで走るとされている。ここまでのタイムは52分。体力もまだ十分に
残っている。少しずつコースが狭くなり、ランナー同士の脚が引っかから
ないか気になり、なるべく端を走るようになり、空いているスペースを
探しながら走るようになった。そんな走りをしているうちにペースを乱し
始めてしまった。


 15㎞地点。体力、脚に徐々に疲労を感じ始めていた。狭くなったコースが
広くなり、ランナー同士の間隔が広がり走りやすくなった。また自分の
ペースで走ろうと思うが、一度乱したペースを取り戻すことができない。
快調に走っていた先ほどまでとは明らかに違い、フォームも乱れてしまって
いた。すると、20㎞を過ぎた辺りで道路のくぼみに脚を取られて、左股関節
辺りを痛めてしまった。道路のくぼみが大きかったわけでも深かったわけでも
なく、少しのくぼみが私の疲労した脚に襲い掛かってきたのだ。それでも走る
ことを止めずにゴールを目指した。堤防に吹く風や坂道がとてつもなくしんどく
感じるようになった。

 25㎞を通過。タイムは2時間21分。痛めた左股関節辺りをかばって走った
代償が右足関節の痛みとして現れた。ここから、疲労感と痛みとの戦いが
始まった。一歩、一歩と進むが、痛みで心が折れそうになる。「痛みが
ひどくなると仕事に影響するから無理はあかんな」、「ここまで頑張ったから
いいかな」と歩く理由を探し始めていた。今回のフルマラソン挑戦で私の中で
もう一つの目標があった。それは、絶対に歩かない事。しかし、その目標は
達成できない可能性が出てきた。「もう完走だけでいいや、トレーニングも
含めて頑張ったし、痛いのだからしょうがない」、でも… やっぱり挑戦
するからには自分に負けたくないとの思いが勝った。どんなに遅くても
不細工な走り方でも最後までやり切ろうと自分に何度も何度も言い聞かせた。

                       
                                  

いよいよ30㎞を超えた。30㎞を超えた練習はしたことがなく、未知の世界で
あった。フルマラソン経験者に聞いたことがあるのだが、30㎞超えるとゾンビ
みたいな集団になるよとの事だった。私も前を向いていた視線がしだいに
下向きになり、脚を上げる力も弱く引きずるような足取りになる。まさに
ゾンビのようだ(笑)。

 沿道の声援の力もあり、何とか35㎞を通過。このころには1㎞約8分を
超えていた。体力も脚も限界を超えていたが、見慣れた景色になってきた。
私の地元、練習で走っていた運動公園外周に入った。ゴールまであと
ひと踏ん張り。ただ、時間を確認する余裕も声援に応える元気も残されて
いない。無情にも目の前には坂道。脚が動くのだろうか。多くの人が膝に
手をついて歩いている。何とか坂道の上に着いたが、すぐに下りるという
試練。限界を超えた脚はブレーキも効かずに転倒の危険さえあった。

 40㎞を通過。もう残された気力もわずか。最後の力を振り絞って顔を
上げてゴールを目指し前へ前へと進む。

 42㎞通過。「頑張れ、あと少し」、「ここまでよく頑張った、お疲れ様」、
「完走、おめでとう」、色んな声援の中、ゴールする事が出来た。結果は
グロスタイム(号砲と同時にカウントされる時間)4時間46分48秒、
ネットタイム(スタート地点からゴール地点までの時間)4時間45分15秒。
私の42・195㎞の挑戦は「サブ5」、「歩かない事」という目標を達成し
終える事が出来た。


 本当にいい経験であり、爽やかな気持ちになった。しかし、達成感を
得られることがなかった。きっと、練習不足を痛感した事、最後まで
思っていた走りが出来なかったからだと思う。やはり、達成感を味わいたいと
今でも思うのはこの挑戦に心残りがあるからだと思う。今回が最初で最後の
フルマラソンへの挑戦だと思っていたが、まだまだ私の挑戦は続くことに
なるだろう。


 「ふくい桜マラソン2024」には多くのスタッフの方、ボランティアの方、
県民の方の協力があって無事成功したのだと思う。本当にありがとうございました。
そして、大変お疲れ様でした。





次回予告!
2025年 6月24日に更新します
どうぞお楽しみに!!


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